コミケの新刊の入稿も終わってほっと一息付けたので、前々から作ろうと考えていた「美味しい味を作る構成要素を表現するためのイメージ図」を作りました。上記の図は、ずっと私の頭の中であった味に対するイメージを具体的にしたものです。
私は、美味しい味とはどのような要素から出来上がっているのか、ずっと考えてきました。あれこれ料理を作りつつ考えた結果、美味しい味を作るために必要な要素を極限まで絞り込むと「塩分」「出汁」「風味」の三種類の要素となるという概念が私の中で出来上がってきました。食材や調味料は、全てこの三つの要素を独自のバランスで持っているという概念です。色々な食材や調味料を組み合わせ、この三種類の要素のバランスを整えてあげれば自然と美味しくなる、と私は考えています。この概念は、昨年の冬コミで発行した「料理の住人02 美味しい味の作り方」である程度まとめたのですが、文章で長々と書いてもなかなか理解して貰えないだろうなと感じていました。では「どうすれば効率良く人にこの概念を伝えられるのか?」と考え続け、思いついたのが図を作る事でした。自分の頭の中にあるこのイメージを具体的な図にしてあげれば説明もしやすいし、瞬時に分かる人もいるんじゃないかと考えたのです。
この図を作る時に真っ先に考慮したのが、昔から存在している「五味」という考え方です。人が味覚で感じる味には甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の五種類があるという考え方で、知ってる人も多いと思いますが、じゃぁそれをどのように考えれば美味しい味になるかという文献や資料はほぼ見たことが無いです。一応「Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ」という本にそれらしいことが書いてあったのですが、では五味をどのように解釈すれば具体的に美味しい味にが作れるかの説明はありませんでした。
また、ネット上だと下記のような有益な文章や図の情報があり、かなり参考にしました。
味を感じる仕組み – 百珈苑
味香り戦略研究所 おいしさの構成要素
百珈苑や味香り戦略研究所のページでは、五味ではなく渋味も加わって六味で味の構成要素が表現されています。ただ、こちらもやはり美味しい味を明確に作る為の考え方は記載されていません。
これらのページを見てる時に、美味しい味を説明するならば五味の考え方を取り入れる必要があると考え、「自分の中の概念と、五味を結びつけた図を作ろう!」と思い完成させたのが上記の図です。
解説すると、「美味しい味を作るのに最低限必要な三要素」として塩味・旨味・香りをグループ分けしています。私が元々考えていた美味しい味を作るための要素は塩分・出汁・風味の三つ。この三つを下記のように五味に変換して考えました。
塩分 → 塩味
出汁 → 旨味
風味 → 香り
これならすっきり分かりやすい! え? 全然すっきり分かりやすくないって? まーやっぱりそうですよねー。図にしたからってすぐに理解出来るってもんでもないですよね。美味しい味は味覚以外にも様々な要因が複合的に絡み合って出来上がっているので、単純にこの図だけで全てを説明出来る訳では無いですが、美味しい味を意図的に作る為のベースの概念としてはかなり有効なモノなのではないかと考えています。そしてまだまだ発展させる余地がある図だと思っているので、もしこの図のイメージに共感してくれる人がいれば、どんどんパクって発展させて欲しいと考えています。
私は今、全ての料理に共通する普遍的な美味しい味を作る方法論を作り上げたいと考えていて、そしてそれが出来ると考えています。自分の中の感覚としては完成しているんですが、感覚的な側面が強すぎる為、完全な理論として完成するまでには何十年も掛かるかもしれないですが、もしこれが作り上げられれば、客観的に味を評価するための言語すら作れるのではないかと考えています。料理漫画やグルメ番組でよく言われる「コク」とか「深み」とか「キレ」とか、すごく定義が曖昧ですよね。これらを明確に定義出来たらすごいんじゃないか
とか、そんな大それた事を考えています。
尚、下記の図ですが、上記の図ではカッコヨさとかオシャレさが足りないと思ってデザインし直したものになります。こっちだと見た目だけを重視して作ったので、自分が表現したい意図を若干削ったりもしてますが、こっちの方が目を引くような気がするので、こちらの画像も貼っておきたいと思います。
twitterの背景画像にもしてみました。
https://twitter.com/milkmanscc