風味を自在に操るための基礎知識


料理の味において、五味と同じくらい重要な要素として「風味」があります。鼻つまんで食べると、何の料理なのか全く分からなくなることってありますよね。これは、鼻をつまむことで、口の中から鼻に抜ける風味を感じることが出来なくなるからです。この現象からも分かる通り、我々が味だと感じているものは、殆ど風味によるものだと言っても過言ではありません。そのくらい、料理の味に対して、風味は大事な要素です。

ただ、それだけ風味は大事な要素のはずなのに、風味についてどう考えていけば美味しい味を作れるのか、全く情報がありません。なので、私の中にある風味についての基礎知識を、書いていきたいと思います。名付けて「風味を自在に操るための基礎知識」です。

風味とは

まず、風味とは何ぞや? というところから簡単に説明しておきたいと思います。冒頭でも少し書きましたが、風味とは、口の中から鼻に抜ける香りの事です。ここで大事なのは、鼻から空気を吸って感じる香りと、口の中から鼻に抜ける香りは、人間にとって全く別の感じ方をする、ということです。これは何となくは理解してても、明確に違いを意識している人は少ないと思うので、前提として伝えさせてください。

ちなみに、香りの専門分野の用語ですと、鼻から空気を吸って感じる香りのことは「オルソネイザル」と呼び、口の中から鼻に抜ける香りのことは「レトロネイザル」と呼ぶそうです。この辺りの話は、以前も紹介した「美味しさの脳科学:においが味わいを決めている」に詳しく書いてあります。

風味を強くする食材

風味を強くする食材はいくつかありますが、特徴的なのはネギ・生姜・ニンニクなどの香味野菜と言われる野菜たちです。これらを料理に入れるだけで、いまいちだった味がパッと美味しくなったりします。これは、明らかに風味不足だった料理に対して、風味がアップすることで美味しくなったという現象です。カレー粉なんかも、一気に風味が増すので、大体の料理は美味しくなる訳です。

ちなみにインドカレーのコツで「味がいまいちなら塩を入れろ、塩が味の決め手だ」なんて言われますが、これは何故かを考えると、カレーはスパイスの塊みたいなものなので、風味は十分に備わっているのです。なので、もし味がいまいちだと感じなら、残る足りない要素は塩だ、という訳ですね。

風味に関する注意点

風味をアップすると料理は美味しくなる、それは間違いないのですが、実は諸刃の剣でもあることは抑えておかないといけません。例えば大葉、大葉の風味が苦手な人って結構多いですよね。でも、大葉の風味が死ぬほど好きな人もいます。つまり、風味を強くし過ぎると、苦手な人も多くなってくる、ということです。風味を強く利かせる料理を作るならば、料理を食べてもらう人の趣味嗜好なども考慮しないと、せっかく作ったのに食べてもらえない、ということにもなりかねないので注意が必要です。

……という訳でここまで風味に対して詳しい人なら大体知ってることを書いてきましたが、次からが本記事の本番です。風味を自在に操るための基礎知識、です。

風味を自在に操るための基礎知識

世の中には米、小麦、肉、魚、野菜などなど多種多様な食材がありますが、調理の仕方によって、風味が強くなったり弱くなったりします。どうすれば風味が強くなるのか、弱くなるのかを食材別に意識することで、風味を自在に操ることができるようになります。自在に操るためのポイントは「火を通すか、通さないか」です。

穀物

日本人の主食、お米は「火を通すと風味が増す食材」です。炊き立てのご飯なんかは風味に溢れていてそれだけで美味しく食べれるものですが、日本人が大好きなおこげ、これは米に火が入り、メイラード反応することで風味がアップして、美味しくなる訳です。

メイラード反応 – Wikipedia

小麦も同様に、焼き立てのパンが美味しいと感じるのは、メイラード反応で風味がアップするからです。焼きとうもろこしが美味しいもの同様です。これらから分かるのは、穀物類は基本的に火を通すと風味がアップするということです。

葉物野菜

レタスやほうれん草など、サラダによく入っているような葉物野菜、これらは明らかに火を通すと風味がダウンします。スープに入れてぐだぐだに煮ると、風味があるようなないような感じになってしまったという経験のある人は多いのではないでしょうか。また、穀物類のようなメイラード反応による風味アップを試みても、だいたい焦げ臭い感じになって風味をアップするどころではなくなるでしょう。

香味野菜

ネギ・生姜・ニンニクなどの香味野菜は、火を入れても入れなくても、どちらでも風味が強いです。比較するのであれば、ニンニクなどは火を入れると風味がマイルドにはなりますが、やっぱり風味は強いです。

根菜

玉ねぎ・ジャガイモ・サツマイモなどの根菜は、火を通すとメイラード反応で風味がアップするものの代表格です。玉ねぎを炒めた飴色玉ねぎなんて、その代表格です。揚げたジャガイモも美味しいですよね。

肉・魚

肉や魚は、生のままだと殆ど生臭い感じしかしないと思いますが、基本火を入れると一気に風味がアップします。これもメイラード反応ですね。ステーキとか焼き魚とか、火を入れた焦げの美味しい風味がほんとたまらないです。

調味料

醤油や味噌などの調味料は、基本的に火を入れると風味が弱くなります。味噌汁を作る時にぐらぐら沸かせるな、とはよく言いますが、これは火を入れすぎると味噌の風味が飛んでしまって美味しくなくなるから、ということです。醤油なんかも火を入れると風味が飛んでしまうので、煮物なんかのレシピでも、火を止めてから醤油をさっと人回しするものがよくありますが、それは醤油の風味を強くしたい、ということです。

風味を自在に操るための基礎知識まとめ

ここまでの情報をまとめますと、以下のようになります。

・火を通すと風味がアップする食材
穀物類
根菜
肉・魚

・火を通すと風味がダウンする食材
葉物野菜
調味料

・火を通しても通さなくても風味が強い食材
香味野菜

他にも食材は多種多様にありすぎて、細かくは書ききれませんが、上記の事を意識しておけばだいたい大丈夫。味がいまいちだなと思う場合、それは風味が足りないかもしません。そんな時、何故風味が足りないのか、どうすれば風味がアップできるのか考えて料理をし続ければ、いずれは風味を自在に操れるようになり、もっと狙って美味しい料理が作れるようになるはず。お試しあれ~。