「コクと旨味の秘密」を読んで自分の「美味しい味の理論」と比べてみた


私の中には、「どんな料理もこんな風に考えて作れば美味しくなる」っていう理論があるんですが、それでは人にとって「美味しい」とはどのような状態なのかを最近ずっと考えてて、味覚について書かれている本を色々読んでいるんですが、この「コクと旨味の秘密(伏木亨:新潮新書)」もそのひとつです。コクとか旨味とかって、味を語る時によく使うけど、じゃぁ説明しろって言われても難しいですよね。この本は、コクや旨味について科学的な見知から解き明かしていこうという内容です。ただし、科学はまだまだ人間の味覚のメカニズムを100%解明出来てはいないので、最新の研究結果を参考に「コクや旨味はどのようなものであるか」を考えていく、そんな内容です。尚、この本は2005年に出版された本なのですが、美味しさを過去の人がどのように考えていたのかを考えるにあたって、非常に参考になる本だと思います。

この本の第5話で、興味深い箇所がありました。この作者は「コクというのは三層構造になっている」と考えているのです。第一層のコクがに美味しさにとって一番大事な存在となっており、第二層、第三層の要素が重なって、最終的にコクや旨味といった美味しい味を作り出す、ということです。この考え方、私の中の美味しい味の理論と発想が似ていたので、非常に面白いと考えました。ではその三層構造の概要を説明していきます。

コクの三層構造


第一層は「コアのコク」
この本ではコア(中心)のことを「コアーのコク」って表現してて、コアーって伸ばす表現は最近はあまり使わないんじゃないかと感じたので、「コアのコク」って書き方にしました。コクのコア(中心)となっているのは糖・脂肪・出汁の三つ。この三つは、マウスなどへの投与実験をしたところ、病みつきになってしまう現象が確認出来たそうです。つまり病みつきになるということは、生物にとって生きるために必要な要素である、と作者は考えたようです。

第二層は「食感、香り、風味」
第二層のコクとして作者は、食感、香り、風味を分類しています。これらは、人が美味しいと感じることに必須な要素ではあるのですが、食感や香り単体ではマウスへの投与実験で病みつきになる現象が出なかったので、第一層のコアのコクは別のものだと分類しています。あくまで第一層のコクと組み合わさることでより効果を発揮する、と考えたようです。

第三層は「精神性」
三層の「精神性」というと分かりにくいですが、簡単に言えば情報・知識・経験などといった要素のことです。人によって味の感じ方が違うのは周知の事実ですが、それらは情報・知識・経験などの差によって生まれます。ここの分類は、味覚という生理的な現象とはちょっと違う内容です。情報・知識・経験などの要素を考えるなら、もっと視覚とか聴覚とかの要素にも触れた方がいいんじゃないかなと思うので、たぶんこの作者的に元々考えていた内容は第一層と第二層だけで、この第三層は理論の体裁を整えるために追加した要素なんじゃないかなぁと想像しました。

ここまで「コクと旨味の秘密」に書いてあったコクの三層構造のことをご紹介しましたが、次に私が昔考えていた美味しい味を作るための理論との共通点を書きたいと思います。

私が考えていた美味しい味の理論

これは私が昔出した同人誌「料理の住人02 美味しい味の作り方」で既に書いた内容ですが、美味しさを作る時のベースになるのは、出汁(旨味)であると考えていたんです。

色んな料理のレシピを参考にすると、スープの素や出汁が大体の料理に入っている事に気がつきました。「出汁は料理の命」なんて言ってる料理人も多かったですし、実際出汁を入れないとなんとなく味気ない感じになってしまうことから、出汁の成分は美味しい味には必須なんだと考え、出汁こそが美味しい味のベースになっていて、その上に塩・砂糖・醤油・酢などの調味料を組み合わせることで、コクのある味、美味しい味が生み出されると私は考えていました。この「出汁が美味しい味のベースになっている」という考えは、この本の第一層のコクである「旨味」と一致します。また、味の構造が層になっている、という考え方も一致していて、これが非常に面白かったです。

私とこの本の作者の違いは、美味しさやコクについて、どこのポイントから考えをスタートするか、という点にあります。私は科学者ではないので、料理をする時の材料や調味料の共通点に着目して、パターンを導き出しました。一方で作者の伏木亨さんの場合は、仕事が大学教授ということなので、最新の科学研究の結果からパターンを導き出したと思われます。このように、美味しい味について考え出したスタート地点が全く違う人間の理論にも、また共通したパターンがあるので、これはすごい面白いと思います。

美味しい味を作るための理論

美味しい味についての研究は、多くの料理人や科学者たちがしてると思います。一流の料理人の中では、自分の中に作り上げた美味しい味を作るための理論が感覚的には完成してると思うのですが、それらを理論化するとなるとまた別の努力が必要になってくるので、色んな人が提唱している「美味しい味を作るための理論」をひとつにまとめ上げるという作業も、今後の美味しい味の解明に繋がるのではないでしょうか。

最近の私は五味五感の分類を軸にして、自分の中にある美味しい味を作る理論をまとめ直しているのですが、これも感覚的にはほぼ完成しているのですが、やはり具体的な形にまとめるのには、もう少し時間が掛かりそうです。

とりあえず下記に過去作った美味しい味を作るための構成要素を貼り付けておきますね。五味五感が、どのように美味しさを作っているか、分かるんじゃないかと思います。ただ、これも今となっては微妙に修正したいなぁと考えています。味の事を考えれば考えるほど、理論に修正が必要になってくるので、それが味について考える面白さかもしれません。

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