甘々と稲妻から考える家庭料理の物語


amaama

はい! 甘々と稲妻ですよ! 現在2巻まで発売してますよ。これは読むべきですよ。これは読むましょう。絶対読むべきです。

「え? いまさら?」という陰口が聞こえてきそうな気もするんですが、そんなのは気にしません。2巻が出てから読んだので、出遅れ感が半端ないですが、この感動を伝えずにはいられないので聞いてください。

甘々と稲妻が我々に教えてくれるのは、「料理が下手だろうがなんだろうが、家族みんなで一緒に料理すれば幸せになれる」ってことです。このパターンは、ザ・シェフや初期美味しんぼなどでも見られる「個々が抱えるトラウマや問題を、料理で見事に解決する」という定番のストーリーではあるんですが、甘々と稲妻が今までと最も違うのは、メインキャラみんなが料理下手なんです。読んでるこっちが思わず手助けしたくなっちゃうような、そんなもどかしさがあります。でも、失敗しながらもみんなで頑張って、なんとか美味しい料理を作る、それがすんごい幸せそうなんですよ。そう、今の世の中には「料理を作ると幸せになれる」ってイメージが足りないんですよ。

それでよくよく考えてみると、物語は家庭料理に関して語ってこなかったのかなと思ったのです。最近でこそ家庭料理や、一人暮らしの自炊をテーマにした、より個人的な狭い範囲をテーマにした料理漫画が増えてますけど、まだまだ出始めて数年って感じです。クッキングパパなんかは家庭料理を扱った料理漫画なんでしょうけど、「家庭料理を作ると幸せになる」ってイメージはあまり提供していない気がします。全然ちゃんと読んだ事ないので意見が言える立場じゃないですが……。

漫画以外では家庭料理を積極的に扱った物語は全く思いつかないですね。料理系の読み物で有名なのは北大路魯山人や妹尾河童の料理エッセイくらいで、すんごく掘り下げていけば何かあるのかもしれませんが、「家庭料理をすると幸せになれるよ!」みたいな物語は聞いたことがないです。更に言えば、500年前・1000年前・2000年前のことで料理の物語をメインにした本って全然知らない。100年以上前の「この人は誰でも知ってる」みたいな料理人の名前すら思いつかない。やはり、物語は料理をあまり語ってこなかったし、家庭料理に至っては更に語られていなかったのかなと。

今はレシピブログで人気が出て、主婦がレシピ本を出版して100万部とか売れる時代ですが、アレはアップしてる料理の写真やレシピが美味しそうだから人気が出る訳じゃなくて、その家庭料理を中心としたその人のライフスタイルに憧れて、人気が出るという事らしいのです。あの人と同じものを作りたい、あの人と同じもの食べてみたい、そんな感じのようです。これはこれで、家庭料理を作って、ブログにアップして、人気が出て、レシピ本出版、というような成功物語が家庭料理に示された訳ですが、これはかなり新しい文化のような気がします。今まで歴史の表舞台には殆ど登場してこなかった、家庭料理に成功物語が生まれた訳です。

最近1000年前とか2000年前の歴史を調べるのに結構はまってるんですが、そこから出てきたイメージは、「人類が解決しなければいけない大きな問題はここ500年でほぼ解決されて、今人類が解決すべき問題はより個人的なことしか残っていないのかもしれない」というものです。食料問題とかもここ500年の緑の革命で解決してるし、何十万人や何百万人が一気に死んでしまうような疫病とかも医学の進歩でほぼ無くなっている。糸井重里が10年以上前に、「世の中は大きな単位から細分化して、どんどん小さな単位になる」と言ってた記事をどこかで読んだような気がするんですが、なんでそんなことを言ってたかのイメージがなんとなく理解出来てきました。やっぱ頭いい人たちは違うなー。分かってる人たちは既に分かってるんです。

そんな訳で途中から甘々と稲妻についてさっぱり語ってないんですが、読めば、料理が下手だろうがなんだろうが、友人たちとか、家族とか、みんなで料理したくなる。みんなで料理したら、きっと楽しい、そんな風に思える料理漫画は初めてだったので、色々と妄想が膨らんでしまいました。私は、100年か200年くらいしたら人は料理を作ることがなくなってしまうと考えているのですが、今のこの「料理をしたくなる」気持ちは大事にしたいなと思いました。

そんな訳で読むべし! 甘々と稲妻!


お、3巻も9月に出るのね。買わねばなるまいて……。